広島県福山市 F様邸
住まいと人のつながりを大切にできる「いこいの森のような家」
鉄筋コンクリートのマンションの一室という環境を大規模にリフォームさせていただきました。草木染めやホメオパシーのコンサルテーションを生業とされている施主様より、「できるだけ木や天然の素材を感じながら気持ちよく暮らしたい。」「自宅でコンサルテーションに来ていただけるお客様にもくつろいでいただけるカフェのような空間にしたい。」「掃除がしやすく、手のかからないつくりにしたい。」という要望に応える空間を提案させていただきました。
家の中で大きな面積をしめる「床」。
天然の木材を使用することはもちろん、うづくり仕上げを行い、一枚一枚手作業で板のふちの角を落とし、「素足で歩いたときに最も心地よい床」を目指しました。
塗料は、木の調湿機能を損なうことなく、自然な美しさを保つ植物油ベースの自然塗料「オスモカラー」を塗って仕上げています。
「うづくり仕上げ」とは…木の表面を特別な機具でこすることによって木目を浮き上がらせる加工です。
自然な凹凸が生まれることで触ったときに心地よく、また、「すべりにくい」「傷がついても目立ちにくい」などの利点もあります。
工場で丁寧に加工を仕上げた床板と腰板を、隙間がないようにきっちりとはりつめていきます。
腰板から上の壁は養生をしたあと、自然素材の「珪藻土」で仕上げます。
◆リビング
家族が集まるリビングは、広々とした開放感を味わっていただけるようベランダと平行に床板を配置しました。
リビング全面、玄関からリビングへぬける通路壁面は、珪藻土で仕上げました。
壁に対して足や手のあたりやすい位置まで腰板をつけることによって、珪藻土に埃や汚れがつきにくく掃除のしやすいお部屋となり、デザイン的にも木の風合い溢れる落ち着いた雰囲気に仕上っています。
カウンター前のクロゼットの中は、コンサルテーションのお仕事をされている施主様のプライベートスペースに。
集中して書き物やパソコンの作業ができるよう、壁よりすこし濃い色味の天然クロスを張り、左右にコンセントを配置。座りやすい高さのパーソナルデスクに仕上げました。
◆お子様部屋・寝室
お子さまのお部屋と施主様寝室は、一部は、アクセントに施主様自らが好みの色で壁をペイントされました。
その他の壁面は、メソポア珪藻土を施主様がDIYで仕上げていただきました。
植物性のプランクトン(藻類の化石)を原料とする珪藻土は、その耐火性の強さから七輪の素材に使われるなど日本人にとってなじみの深い素材です。
珪藻土には…
・断熱、保温性に優れている
・室内の水分を吸湿・放湿するため湿度が一定に保たれる
・多孔質のため臭いを吸着する
・音の反響がすくない
などたくさんのよい点があり、天然の木材とも好相性の素材です。
◆本棚とカウンター
本棚もオーダーメイドでご依頼をいただき、施主様が本の収納にも小物のディスプレイにも使っていただけるように、シンプルなデザインで制作しました。
本棚うしろの壁面は、正面から見た際に心地よく背景として映えるよう、天然色素で調色した珪藻土で落ち着いたグリーンの色合いに。
窓越しに福山市の風景が一望できるカウンターテーブルの素材は、のじま家大工店自信のナラ材の一枚板。
天然木のよさを最大限に生かしながら、床板の色味と合わせてオスモカラーで塗装をし、圧迫感のないナチュラルな雰囲気に仕上げました。
街中に居ながらも一歩ふみ入れるとナチュラルで爽やかな風が通り抜けゆったり時が流れる様な自然を感じる空間で
家族の健康が守られ心も癒され住まいと人のつながりを大切にできるいこいの森のような家に住みたいと思っていました。
規定の多いマンションの施工において木と土の温もりを感じられる部屋をつくることはなかなか難しく手もかかり、やっかいなものなのですが
「できないことはない!」とやってくださると言っていただいたのが(株)のじま家大工店社長の野島さんでした。
野島さんは「NPOぬまくま民家を大切にする会」の理事をされています。会のある古民家(黒木邸)は会員の大工さん方々によって再建されましたが
その一室を独特な雰囲気の洒落た部屋に一変されたのが野島さんです。
その部屋は和風でもなく洋風でもなく「ハイカラさんが通る」の紅緒がおすましして椅子に座りテーブルで紅茶を飲んでいると舌を火傷しちゃって赤面している映像が浮かんでくるような
大正ロマンを感じるステキな異文化を味わえます。「窓からみえる景色とつながる部屋づくりをしたんだ」と言う野島さんの感性はステキだなぁと思いました。
飛騨高山で伝統工法を手がけられ宮大工としても活躍されている野島さんの設計や施工はすばらしくそこに住むひとのことを考えた繊細さとあたたかさを感じる「匠の技」だと思いました。
我が家は、ナチュラルで爽やかな風が通りぬけそして、コンサルテーションをするのにお客様が落ちついた雰囲気の中気軽にお話しができるようなカフェ風な空間創りに焦点をあてました。
木の特徴や性質を知り尽くしている野島さんは、床材に「ナラの木」を選んでくださいました。
ヒノキやマツを使うと日本風になるのでナチュラルにこだわるにはナラしかないと思われたそうです。
そして玄関からリビングにわたる全ての部屋にナラの木をはっていただきました。
ナラの木には一枚一枚「うづくり」をかけてくださり四面はナイフで削ってやすりをかけるという大変手のかかる作業をしてくださいました。
そうすることで木と木のつながりにシャープさがなくなりフローリングに自然なやわらかさが現れます。
また、うづくりをかけることで木目の立体感がでて思わず頬ずりしてしまうほど、木の美しさがひきたちます。
これ程までに時間をかけて手をかけてくださったフローリングに寝ころんでいると想いやりと優しさを身体全体で感じています。
もちろんマンションの遮音にも規定以上の手を尽くしてくださいました。そして、窓際に依頼したカウンターテーブルには床のナラに合う「タモの木」を選んでくださいました。
男性二人で運ぶのも大変な重さの一枚板を台受けもなく脚もつけず溝をつくってスライドさせるという特殊な技術ですっきり魅せてくださいました。
ディスプレイ用の本棚も素人の私にはマジックとしか思えなくてハンドパワーで「エイ!」と縦の木を押しこんでつくったの?とつい聞いてしまったのです!
話はカウンターテーブルに戻りますがぶ厚いタモの木に奥行き段差(?)を入れて圧迫感を抑えてデザイン性を生み出すことも提案くださいました。
なにもかもなんともため息がでる美しさ!すべてがシンプルさの好きな私たちへのへの気づかいが感じられました。そのうえ
私たちがそこで作業をする内容を聞きだし目の前の壁に珪藻土が塗られているなら何かが当たると剥がれてしまうのでその高さのところまで腰板を張るよう考えてくださいました。
また、私たちの身長や使いかたに合わせたテーブルの高さにしてくださいました。
想いやりたっぷりの施工に驚きと感動で本当に恐れいりました!
玄関のかばちには硬く風合いのよいホワイトアッシュという木を選んでくださいました。
実はナラの木のストックがなくなってしまい取り寄せるよりもナラに似てナチュラルで硬さがありストックがあるホワイトアッシュを使うことで玄関と廊下の境い目の肝心要的な趣きを感じます。
機転のきいたセンスのよさと金銭面での配慮がつたわり感謝の気持ちでいっぱいです。
ベランダのウッドデッキには雨にも強く外に置いても水に濡れても腐らない半永久的な木(ウリン)を選んでいただきました。
塗装はしておらず、落ちついた色をしているうえウッドデッキを歩いていても浮いてる感じが全くなく重量感のある密度の高い質のよい木に驚いています。
素足のままベランダに出て寝ころぶと空が見え木の香りがただよい植木の緑がカサカサと風になびきペットのうさぎもスキップしここがマンションだというのも忘れてしまうくらい気持ちのよいお気に入りの場所になっています。
木の床は素足であるくとその良さがつたわってきます。
木は生きているのでこれから四季折々でいろんな顔を見せてくれるのでしょう。
そして使っていくうちにどんどんなじみキズがついてももち味にかわります。
また床のナラの木にはosumoという天然植物塗料をぬっているので人にも飼っているうさぎにも無害です。
娘は喘息があるため、塗料やホルムアルデヒドなどにもこだわりました。
また、野島さんは
私たちの想いを創りあげるため打ち合せを大切にされます。
住むひとの家族構成、職業、趣味嗜好などをふまえた上で何度も打ち合わせを重ね使う人の想いをくみ取りブレがないようにたとえ多少のブレがあったとしても手を尽くしてくださり
私たちの希望にトコトン応えてくださいました。
そして光の入りかたや灯りの当たりかたも考慮し全体の調和をみながら木のもち味を最大限に生かす技と感性は素晴らしく頭がさがる想いです。
住みはじめてあまりの居心地のよさに家に居る時間がとっても長くなりました。
家の中での家事や仕事も充実していて「しあわせだなぁ〜」としみじみ感じています。
このリノベーションに関わってくださった方々にこころより感謝しています。
ありがとうございました。